「ミセス クリスティーナ」vol.3
出るはずのないシャチが波打ち際で8歳の少女の人生を奪ったのである。
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その1年前のある日、いつものようにクリスとチルキーは、クリスの両親の農園でクリスの飼っているゴールデンレトリーバーの「ジョン」と一緒にレンゲ摘みをしていた。
クリスが言った。
「チルキー!私はね、パパとママと一緒に夕食を食べたいの!」
当時のクリスの父親は、朝から晩まで農作業をし、終わるとすぐに呑みに出かけていた。
7歳の娘にとって1番の楽しみは家族と一緒に夕食食べることだった。
チルキーは言った。
「うちに夕食を食べにおいでよ。ママも一緒に!」
それから夕食時になるとクリスと母親は毎日のようにチルキー一家と時間を過ごすようになった。
知能が他の子達よりも発達していたクリスは、自分の気持ちを大人に伝える事が出来た。
それから1年後にチルキーは亡くなった。
あの時の出来事をこう語る。
「チルキーは私の心の空洞を埋めてくれた可愛いレンゲの花。見てごらんなさい。私の庭にはレンゲがたくさん咲いているでしょ。今も変わらずチルキーがいるのよ。」
8歳の少女にとって、解決しきれない出来事から10年が経ち、町のカフェで働くことになったクリス。
今も以前と変わらずチルキーの母親と一緒に夕食を食べている。
働き始めて3ヶ月。
クリスに逢いに来る客が日に日に増えていたある日。
「チャリーン」
いつものように入口のドアのベルがなった。
そこに立っていたのは。。。。。
vol.4に続く