2016年04月08日

「ミセス クリスティーナ」vol.7


「ミセス クリスティーナ」vol.7
クリスはジーンにあいさつをし、隣の部屋をノックした。どんな人だろうと心なしかソワソワしながらドアを開けた。

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部屋に入ると12歳ぐらいの男の子が電話で話をしていた。部屋を見渡してもフーバーらしき人はいない。部屋を間違えたと思い、出ようとした時男の子が電話をきった。

「それじゃあ、馬車3台分を明日市場に持って来てくれるかい?ああ、「ドルジー」いつもありがとね!・・・。ガチャン。君かい?クリスは?仕事を教えるからそこに座って」

クリスは驚きを隠せなかった。目の前にいる12歳ぐらいの男の子がフーバーだったのだ。
クリスが口を開けたまま椅子に座るとすぐにフーバーが一枚の地図を差し出した。

「これが僕らバイヤーが管理している農場の場所と経路だよ」

そこには、無数に辿られた線に、見ただけでは分からないほどのマークが記されていた。
クリスはこれほどの規模とは思いもよらなかった。
フーバーが言った。
「クリス、3日後の出発の手配は済んでるからね。」
「えっ?どこに行くの?」
クリスは思わず聞いた。

またかという表情でフーバーは言った。
「ジーンのやつ、また僕に。。。。しょうがないなぁ。クリスは3日後にこの地図の緑のマークしてある農場に行き、作物の成長具合と、農夫と人間関係を築いてくるんだよ。」

地図に緑のマークしてある農場は、約50カ所あった。クリスは何のためらいもなくフーバーに言った。

「フーバー、これを私ひとりでどれくらいかかると思ってるの?」

フーバーは声を大きくあげた。

「クリス!甘えてんじゃないよ!あんたは1年後には社長だぜ!」

vol.8に続く

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2016年04月04日

「ミセス クリスティーナ」vol.6

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「ミセス クリスティーナ」vol.6

「チルキー!わたし社会を変えるわ!」

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ジーンに連れて来られたのはイギリスのロンドンだった。

クリスの生まれ育ったアマルフィの農村とは、比べものにならない街並みで道行く人は皆背広にハットを被り、髭を蓄えている。

クリスは、イギリス人に圧倒されながらも、これから起こる事に胸が高鳴っていた。

クリスは言った。
「ジーン、わたしは何の仕事をするの?」

「もうすぐ分かるわ。」

ジーンがチラッとクリスを見て言った。

それからしばらく走り、2人を乗せた馬車は、古めかしい二階建ての建物の前で止まった。

ジーンが言った。
「ここよ。」

クリスが降り立った古めかしい二階建ての建物の前には、大勢の人たちが並んでいた。

クリスはジーンに連れられて、並んでいる人たちの間をするりとすり抜け、二階の窓際の部屋に案内された。
どうやらここがジーンのオフィスのようだ。

ジーンが荷物を置くとクリスに言った。
「わたしの仕事は、イギリス各地の農産物をロンドン市場に集め、そこで販売する仕事よ。つまり、中間バイヤーよ。今、外に並んでいた人たちがそのバイヤー達。最近、彼らがまともに仕事をしてくれないから困ってたの。うまく仕事してもらってね。細かい仕事の流れは隣の部屋にいる「フーバー」に聞いてね。」

クリスは一連の内容はすぐに理解したが、まず何をやれば分からなかった。

「そうね!まずはフーバーに聞こう!」

クリスはジーンにあいさつをし、隣の部屋をノックした。どんな人だろうと心なしかソワソワしながらドアを開けた。

vol.7に続く
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2016年04月03日

「ミセス クリスティーナ」vol.5

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「ミセス クリスティーナ」vol.5

「久しぶりね。クリスティーナ」

クリスは突然の出来事に身をたじろがせた。クリスにとってこの洗練された女性の存在は「尊い存在」と認識していたからだ。しかも、自分の名前を呼んでいる。この時始めて息が出来ない経験をした。

どれだけの時間が経ったのか。
女性はじっとクリスを見つめほのかに笑みを浮かべている。クリスは気を取り直し、

「いらっしゃい♬どうして私の名前を知っているの?」

女性はすぐさま答えた。

「やっぱりね。クリスは覚えてないよね。私はチルキーの従姉妹よ。あなた達が生まれて6歳までこの町に住んでいたの。いつも一緒だったじゃない」

クリスは薄れつつあるかすかな記憶をたどった。いつもチルキーと一緒だった事。川辺でチルキーと歌を歌った事。チルキーと喧嘩をした事。
いつもわたし達のそばについて来てくれていたお姉さんを、ずっと近所のお姉さんとして記憶に残していた。
近所のお姉さんだと思っていた女性が、実はチルキーの6歳上の従姉妹の「ジーン」だった。

「ジーン?!チルキーの従姉妹?」

クリスの頭は整理がつかなかった。

「おめでとう。18歳になったのね。しばらく、またこの町に入る事になったの。仕事でね。」

クリスの頭はやっと現実に追い付いた。あのジーンとの再会を心から喜んだ。嬉しさのあまりジーンに力いっぱい抱きついたと同時に涙がこぼれ落ちた。

「チルキーが.....」

ジーンは黙ったままクリスをさらに抱きしめた。

−−−−−−−−。

この日からクリスの意識が変わった。自分でも何かが違うと認識していた。
ジーンは毎日のようにカフェに足を運んでくれた。昔一緒に遊んだ話に花が咲いた。クリスは充実していた。
家に帰って、父親へも1週間に一度は家で食事をしようとも伝えることが出来た。

ジーンがこの町に帰って来て5日目。

ジーンはクリスに言った。
「クリス、わたしの仕事を手伝ってくれない?会社はイギリスにあるの。一緒に来て欲しいの」

田舎の農家で育ったクリスにとって、イギリスは大都会でしかなかった。その大都会にジーンが一緒に来ないかと誘ってくれた。
以前のクリスだったら一瞬にして父親の顔が浮かんだが、今回は違った。

「ジーンありがとう。ずっとこういうの待ってたの!だけど3日待って準備するから」

クリスの心は高鳴った。仕事も切り上げ早く行動したかった。
その晩、父親と母親に伝えた。父親はなんとも言えない表情をして部屋から出て行ったが、母親は行ってきなさいと笑顔で言ってくれた。
次の日の晩、チルキーの家に行った。チルキーの母親にお別れを告げ家を出る時に、母親からチルキーが大事にしていたレンゲのブローチをもらった。

そして、3日目の夜。チルキーのお墓に別れを告げた。

「チルキー、わたし社会を変えるわ。」

vol.6へ続く
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2016年04月02日

「ミセス クリスティーナ」vol.4

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「ミセス クリスティーナ」vol.4

ドアの前に立っていたのは、レンゲ色の綺麗な洋服を身にまとい白いつばの広い帽子を被った清楚な女性だった。

アマルフィの田舎の貧しい農家で生まれ育ったクリスにとって彼女のような女性を見た事がなかった。

女性はクリスにそっと微笑みかけ、左手にある4人席にゆったりと腰掛けた。

クリスがドキドキしながら注文を聞きに行った。

「コーヒーでいいかしら?」

女性はまたクリスに微笑みかけ頷いた。緊張でほのかに震える足に意識を囚われながらすっとその場を離れた。

しばらくしてお店が忙しくなり、気が付けば女性はもう帰っていた。

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次の金曜日の早朝。

いつものようにカフェの仕事へ出掛た。畑が広がる細い道を自転車で走り、町の風景が見え始めた辺りには一面レンゲの花が咲いている。
クリスは毎日この道を通るのが嬉しかった。それは、チルキーがいつも自分のそばにいてくれる感じがしたからだ。

そんなくつろぎ溢れる時間はすぐに過ぎ街の広い道へと入ってきた。
パン屋があり、父親の行きつけの飲み屋があり、少し行くと花屋があった。

ふと花屋で花を買っている女性に目がいった。

「あっ!この間の綺麗な女性だ!」

その瞬間、なぜかクリスは全力で自転車をこいでいた。自分でも分からなかった。

店に着くとさっきの女性の事は忘れていた。すぐに開店準備をして店を開けた。
この店の店主は、どうやらコーヒー通で豆の取り扱いが厳しかった。

慎重に今日使う分の豆を袋から瓶に移し終える頃、最初の「チャリーン」がなった。

「いらっしゃい♬」

クリスがふと見上げると、先ほどの女性が花束を抱え立っていた。。

女性は一歩また一歩とクリスに近づいてきた。
女性がそっと口を開きクリスに言った。

「久しぶりね。クリスティーナ」

vol.5に続く
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2016年03月30日

「ミセス クリスティーナ」vol.3

「ミセス クリスティーナ」vol.3

出るはずのないシャチが波打ち際で8歳の少女の人生を奪ったのである。

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その1年前のある日、いつものようにクリスとチルキーは、クリスの両親の農園でクリスの飼っているゴールデンレトリーバーの「ジョン」と一緒にレンゲ摘みをしていた。

クリスが言った。

「チルキー!私はね、パパとママと一緒に夕食を食べたいの!」

当時のクリスの父親は、朝から晩まで農作業をし、終わるとすぐに呑みに出かけていた。
7歳の娘にとって1番の楽しみは家族と一緒に夕食食べることだった。

チルキーは言った。

「うちに夕食を食べにおいでよ。ママも一緒に!」

それから夕食時になるとクリスと母親は毎日のようにチルキー一家と時間を過ごすようになった。

知能が他の子達よりも発達していたクリスは、自分の気持ちを大人に伝える事が出来た。

それから1年後にチルキーは亡くなった。

あの時の出来事をこう語る。

「チルキーは私の心の空洞を埋めてくれた可愛いレンゲの花。見てごらんなさい。私の庭にはレンゲがたくさん咲いているでしょ。今も変わらずチルキーがいるのよ。」

8歳の少女にとって、解決しきれない出来事から10年が経ち、町のカフェで働くことになったクリス。

今も以前と変わらずチルキーの母親と一緒に夕食を食べている。

働き始めて3ヶ月。
クリスに逢いに来る客が日に日に増えていたある日。
「チャリーン」
いつものように入口のドアのベルがなった。

そこに立っていたのは。。。。。

vol.4に続く
posted by 三日月とCAFE at 15:21| お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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